☆人当たりの良い医師は少ないので貴重です
私が勤務する病院の院長先生は、以前同じ地元で個人病院を開院していた先生の2代目先生です。
すでに先代の先生は他界しているのですが、年配の患者さんからはいまだに「若先生」と呼ばれることもあり、微笑ましいです。
そんな院長先生は、噂によると、あまり優秀ではない私大卒で、若いときから派手に遊びまくり、国家試験も危ないのではないかといわれていたとか。
ところが、人当たりが良くて接客上手というのか(患者さんなので接客とは言わないのですが…)、とにかく患者さんからは人気があるのです。
さまざまな患者さんとのトラブルも、院長先生が登場すればたいていは5分で解決。まさに院内のスーパーマンです。
ちょっと難しい患者さんというのは、トラブルを起こしますから、ちょっとした有名人になり、ナースたちもできれば担当になりたくない、関わりたくないと思ってしまうものです。
ところが、そんな気むずかしい患者さんも、院長先生の口車に乗ってしまうのです。
☆しっかり営業もできる院長先生
地元では有名だと自分では思っている元市議会議員さんが入院したときも、若い看護師たちはその患者さんのことを知らないわけです。
そんなとき、院長先生はしょっちゅうその元議員さんのベッドに行き、「先生、先生」と持ち上げるのです。ナースがいれば「こちらは市議会議員先生だから失礼のないようにね」と口にし、さらに「先生、落ち着かないようでしたら、今、特別室空いてますから。ちょっと差額はかかっちゃいますけど、いつでもおっしゃってください」と、自費で差額を払う個室を営業。
元議員さんは良い顔したくて「それじゃあ、そうしてもらおうかな」と、シャワー付きの特別室に入院したりするのです。空けていては差額ベッド料が病院には入らないわけですから、院長先生は立派な営業マンです。
自分が私大であまり頭が良くないと言うことも時折ネタにしていて、やはり気難しいタイプの、元高校教師には「先生は国立大卒でしたよね。うちの看護師長も優秀で、国立なんですよ。僕なんかと違ってちゃんと勉強してきたタイプなんで、ナースに話が通じなかったら、看護師長呼んでください」などと調子の良いことを言います。
国立大卒が自慢の元教師は、みんなの前で学歴を披露してもらい超ご機嫌で入院生活を送りますから、担当するナースたちも助かるのです。ナースたちも「先生」と呼びかけることで、さらに気難しい患者も良い気分ですごせるわけです。
医師として技術や頭脳が優秀なのは良いことでしょうが、実際のところ、うちの院長先生みたいなタイプの人の方が、病院経営には向いていると思います。
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